食物アレルギーは、年齢により特徴があります。乳児では、牛乳に対する消化管アレルギー(下痢、嘔吐)が見られますが、多くは徐々に改善します。小児期・学童期では、鶏卵、乳製品に対する食物アレルギーが多く、蕁麻疹として見られることが多いです。重症例では、アナフィララキシー状態となることもあります。成人では、小麦・甲殻類・果物に対する反応が多く見られます。以前は喘息や、アレルギー性鼻炎の原因とされていたダニ抗原も、経口摂取することによりアレルギー反応を引き起こすことがあります。
原因食物として、0~3歳では、鶏卵、牛乳、魚卵に対する食物アレルギーが多く、4歳~6歳では、ソバ、鶏卵、木の実、学童期では、果物、甲殻類、小麦というデータが報告されています。(厚労省食物アレルギーの診療の手引きより)
血液検査(特異的IgE抗体検査)で、ある食物に陽性反応が出ても、食べて反応がでるとは限りませんので、食べて反応がでるものだけ、除去します。
鶏卵、牛乳、小麦、大豆は、成長とともに食物アレルギーが改善していく傾向があり、多くは、食べられるようになります。
以前は厳密な除去食が行われていましたが、最近は、少しずつ食べる量を増やして行く方法が行われています(減感作療法)。
一方、思春期以降に食物アレルギーが発症すると、難治性の例が多いです。思春期・成人期のアレルギーは小児と異なり、甲殻類(エビ、カニなど)や小麦のアレルギーが多くなります。カニやエビのアレルギーは、それぞれが持つ特定のタンパク質で誘発されるので、食べると短時間で症状が出るので多くの方は原因食品に気づきます。
しかし、納豆アレルギーでは、食べてから数時間から半日たってから症状が出ることが多いので、原因として気づかないこともあります。
納豆アレルギーは、大豆に対するアレルギーではなく、納豆菌に原因があるとされています。納豆のネバネバに含まれるポリガンマグルタミン酸の作用で、納豆抗原が徐々に放出されるため、発症まで時間がかかると考えられています。
又、小麦アレルギーには特徴があります。
小麦を食べるだけでは症状が出ないことが多いのですが、食べた後に運動すると強いアレルギー反応(アナフィラキシー)が誘発される例が多く見られます。
小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(Wheat-dependent exercise-induced anaphylaxis; WDEIA)と言います。
全身に蕁麻疹(膨疹)が見られ、重症例では、血圧低下などのアナフラキシー症状となることが多いです。
小麦アレルギーが疑われる方は、小麦摂取後4時間以内の運動は控えたほうがよいと思います。又、小麦摂取と一緒にアスピリンの飲むと、小麦摂取後の運動と同様にアナフィラキシーが誘発され易いと言われています。
小麦アレルギーと考えられてケースの中に、実際はダニ抗原のアレルギーであった例が、最近、報告されています。
開封して時間が経過した「お好み焼き粉」や、「パンケーキ粉」は、ダニが増殖している可能性が高いので、注意してください。
開封後は冷蔵庫で保管することをおすすめします。
最近は、"茶のしずく石鹸"を使った方に、新たなタイプの小麦アレルギーの発症が報告されています。石鹸に含まれていた加水分解小麦成分(グルパール19S)が、眼や鼻の粘膜から吸収されて、小麦アレルギーが形成されると考えられています。
洗顔時に瞼や顔が腫れるだけではなく、体に蕁麻疹が出てきます。小麦を摂取後に運動すると、小麦依存性運動誘発アナフィラキシーの症状が見られることもあります。多くの報告があった為、この"茶のしずく石鹸"は回収され、出回っていません。
食物摂取後に短時間で口腔粘膜や口唇、咽頭に痒みや刺激感・閉塞感を感じ、粘膜の腫脹を見る方がおられます。
口腔アレルギー症候群といいます(OAS, Oral Alleryg Syndrome)。小児でも時に見られますが、多くは成人で花粉症の症状をもっている方です。花粉症の原因タンパク質と似た形のタンパク質を持つ野菜や果物を食べると、「交差反応」が起きて症状が出ます。花粉症の方すべてに見られるわけではありません。
カバノキ科(ハンノキ、シラカバ)に感作されている患者さんに、多い傾向があります。
また、天然ゴムアレルギー(ラテックスアレルギー)のある方は、バナナ、クリ、アボガド、キウイなどの果物にアレルギーを起こすことがあります。
ラテックス・フルーツ症候群と呼ばれています。
ラテックスアレルギーの患者さんが、バナナ、アボガド、キウイなどの食物アレルギーを合併する確率は、30~50%で、重篤な症状が見られる危険性が高いと報告されています。天然ゴム製品の原料は、東南アジアで栽培されているゴムの木の樹液なので、トロピカルフルーツに交差反応性を示すと考えられています。
ラテックスアレルギーは先にゴム(ラテックス)に感作され(アレルギーが形成されること)、その後、交差抗原性を有する食物を食べて発症します。ラテックスアレルギーを防ぐために、グローブを使用する際には、ゴム製ではなく、ビニール・プラスチック製使用することをお勧めします。
治療としては、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤が使われますが、時に、呼吸困難や全身性の強い反応(アナフィラキシー)が出ることもありますので、注意が必要です。
花粉 | 反応しうる果物・野菜 |
カバノキ科 (ハンノキ、シラカバ) |
バラ科(リンゴ、サクランボ、モモ、ナシ、イチゴ) マメ科(大豆、ピーナツ) セリ科(セロリ、ニンジン) その他(ピーナツ、ヘーゼルナッツ、クルミ) 香辛料(マスタード) |
ヒノキ科 (スギ、ヒノキ) |
ナス科(トマト) |
イネ科 (カモガヤ) |
ウリ科(メロン、スイカ、キュウリ) ナス科(トマト、ジャガイモ) オレンジ、バナナ、アボガド |
キク科 (ブタクサ) |
ウリ科(メロン、スイカ、キュウリ) |
キク科 (ヨモギ) |
セリ科(セロリ)、スパイス |