当院では、漢方薬による治療を行っています。漢方は標治療(現在みられる症状を治療する)と、本治療(症状を起こしている原因を治療する)をあわせて行なうのが特徴です。乳幼児、小児では、本治がほとんどですが、成人では本治を行なうべき症状が修飾されているため標治療が重要です。
アトピー性皮膚炎の治療に漢方を使う機会が多いです。ステロイドの副作用を心配して使用を急に止める方がおられますが、急に止めると皮膚が赤く腫れ浸出液が多量に出ます。寒気を感じたり、時には熱が出ることもあります(離脱症状)。この状態には漢方が大変有効です。 腎陽虚(内分泌、免疫機能の低下状態)と考え、腎を補う治療と同時に、寒気、腫れ、浸出液に対し補陽剤、利水剤を使用します。離脱症状に利水剤は大変有効で、浸出液は抑えられ皮膚は徐々に乾いてきます。
「アトピー性皮膚炎にこの漢方」と決まっている訳ではなくその方の体質と皮膚の状態にあった薬剤が処方されます。漢方薬には、煎じ薬(湯液)もありますが、当院では手軽に飲めるように、主に保険適用のエキス剤(粉末の内服剤)を使用しています。保険適用されていますので、費用は抗アレルギー剤などと大きくは変わりません。お気軽にご相談ください。
補陽剤 | 真武湯 | 陽虚により冷え・浮腫が強く、・ふらつき、水様下痢を認める時。 |
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人参湯 | 食欲・元気がなくお腹や四肢が冷えている時。 | |
補気剤 | 補中益気湯 | 消化機能が弱く、体力低下、倦怠感が認められる。 |
小建中湯 | 胃腸の弱い虚弱児の体質改善に用いられる。 | |
六君子湯 | 胃腸が弱く、食欲がなく、みぞおちがつかえ疲れやすく、冷える時。 | |
気血双補剤 | 十全大補湯 | 手足の冷え、寝汗があり、体力消耗時に。全身の紅み、痒みや カサカサに奏効する。 |
帰脾湯 | 食欲不振、元気がない、日中も眠くうとうとする、眠りが浅い時。 | |
理気剤 | 抑肝散 | 神経がたかぶって、イライラしたり筋肉が緊張している時 |
半夏厚朴湯 | 気分がふさいで咽頭、食道部に異物感があり、時に嘔気などともなう時。 | |
補血剤 | 当帰飲子 | 血虚、血繰による乾燥性の皮膚炎で痒みの強い時。 |
化湿・利水剤 | 越婢加朮湯 | 小水疱が多発し、浮腫、湿潤が見られるとき。強い作用があり長期間は用いない。 |
猪苓湯 | 膀胱炎などによく使用されるが、皮膚の炎症が強く、腫れている時に奏功する。 | |
清熱剤 | 白虎加人参湯 | 顔のほてりとのどの渇きが強い時。熱を冷まし、潤す作用がある。 |
消風散 | 分泌物が多く、紅味のある皮膚炎で,痒みが強く、夏季悪化傾向のある場合。 | |
五淋散 | 主に膀胱炎に用いられるが、浸出液を伴った湿疹に効果がある。 | |
黄連解毒湯 | のぼせ気味でイライラ感の強い時。紅みや痒みを抑える作用が強く、よく使用されるく。 | |
辛夷清肺湯 | 肺熱のための鼻閉や口渇につかわれるが、顔面の熱感・乾燥・紅みに効果がある。 | |
排膿散及湯 | 排膿作用があり、アトピー性皮膚炎に感染症を合併した時に奏効する。 | |
十味敗毒湯 | 充実性丘疹や膿疱が見られる時。 | |
温清飲 | 皮膚は乾燥し、紅く、痒みの強い時。アトピー性皮膚炎の慢性期に使用される。 | |
三物黄ごん湯 | 乾燥、赤み、痒みに対して用いる。潤す作用がある(滋陰) | |
駆お血剤 | 桂枝茯苓丸 | 慢性の湿疹、色素沈着、血管拡張に使用。血流を改善し、ニキビ、生理痛にも有効。 |
滋陰剤 | 六味丸 | 陰虚による虚熱の薬。皮膚の乾燥・痒みに使用。 |
麦門冬湯 | 気道粘膜の乾燥による咳に使用する方剤であるが、皮膚の乾燥にも効果がある。 |