掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)

掌蹠膿疱症は手のひら(手掌)と足の裏(足底)に、膿が溜まっている様に見える小さいな発疹(膿疱)が、繰り返し出現する皮膚疾患です。時に痒みがあり、慢性の経過をとります。皮膚のみではなく、胸骨、鎖骨、肋骨などの骨や関節に激しい痛みが発生することがあります(掌蹠膿疱症性骨関節炎)。

病気の本態は不明ですが、ほとんどが喫煙する方に発症します。扁桃切除や歯の金属除去で軽快する例があることから、慢性の扁桃炎や金属アレルギーの関与も考えられています。

治療として、喫煙者はまず禁煙です。これだけで軽快する例があります。扁桃炎を繰り返している方は耳鼻科受診をおすすめしています。皮膚科では、通常、ステロイド軟膏の外用、紫外線治療、ミノサイクリン投与などが行われていますが、難治性で長年にわたり悩まされる方が多いのが現状です。

掌蹠膿疱症には、ビオチンが大変有効です。当院では、前橋 賢医師の報告を参考にビオチンと整腸剤の一種(活性酪酸菌製剤)を併用投与しています。 治療中は生卵の摂取を制限していただいています。生卵の白身に含まれているアビジンがビオチンと結合してビオチンの吸収が悪くなるためです。

ビオチンはビタミンB群に属する水溶性ビタミンで、ビタミンHとも言われます。Hは、ドイツ語の皮膚(Haut)に由来したもので、以前から皮膚炎の治療に使用されていました。皮膚病変に対する効果は時間がかかる例が多いですが、関節痛には短期間に効果が出ます。

前橋 賢医師の研究によると、ビオチンが不足するとTリンパ球の抑制細胞が活性化しなくなり、抗体作りに歯止めがきかなくなるとされています。その結果、過剰になった抗体が皮膚や骨膜に沈着して、掌蹠膿疱症を発症すると報告されています。