アトピー性皮膚炎の研究で最近注目を集めているのが、皮膚のバリア機能と保湿機能です。この機能を担っているのが、皮膚の最外層を覆う角層です。角層は、20ミクロンという薄さにもかかわらず、病原微生物やさまざまな物質の進入を防ぐとともに、皮膚の柔軟性や美しさに大きな影響をあたえています。
角層は、次の3つで構成されています。
皮膚表面の皮脂膜の遊離脂肪酸や、汗に含まれる乳酸など多くの酸が混じり合っており、弱酸性を示します(pH5.5程度)。この近辺のpHでは常在菌以外の病原菌が繁殖しにくく、病原微生物の繁殖する余地を与えないバランスを保っています。皮脂膜を保持することが、細菌感染の予防になります。
角質細胞は分化して角層に到る過程で、蛋白質同士が架橋し、不溶化して、非常に堅固な構造となります。このため分子量500以上の物質はほとんど透過しないとされています。また、角質細胞内にある天然保湿因子(NMF)は角層の水分保持の主役となっています。
細胞間脂質は、セラミド、コレステロール、遊離脂肪酸などから構成され、これらの脂質の量的、あるいは質的な変化や配向の乱れなどによって、バリア機能が大きく変動します。細胞間脂質は角層のバリア機能に重要な役割を担っています。
表面の皮脂膜は、洗浄剤の界面活性作用で簡単に溶け出します。さらに洗い過ぎると、角質細胞間脂質の成分まで失われバリア構造そのものが破壊されてしまうことになります。
界面活性作用のない水もバリア機能に影響を与えます。水に長時間浸ると角質細胞は膨潤して蛋白質が断裂し、バリア機能の破壊につながります。過度の長風呂はお勧めできません。
バリア機能が低下すると、角層の透過性が亢進し、病原微生物の侵入による感染症が発症しやすくなるとともに、抗原曝露が持続的かつ大量に行われてアレルギー反応や炎症が生じ易くなります。
実験的に皮膚の脂分を抜くと,知覚神経が表皮近くまで伸びるためかゆみを感じやすくなると、順天堂大学附属浦安病院の高森医師らが報告しておます。洗い過ぎによる脂分の流出が、神経学的にも影響を及ぼすことが示唆されています。
洗いすぎは、皮膚に大きな傷害をあたえます。洗いすぎに注意しましょう。