唇は他の皮膚とは構造が違います。唇には、油分を保つ皮脂腺がない為、乾燥しやすい状態にあります。アミノ酸や尿素といった成分で構成される天然保湿因子も少ないのです。さらに角質層が薄いため、水分が蒸発しやすいのです。乾燥肌でない人でも、唇の皮がむけたり、表面が割れたりします。
乾燥すると、舌でなめ回して唾液でぬらすことがありますが、かえって症状を悪化させます。唾液には潤い成分がありませんので、長く皮膚につくと逆に刺激になります。なめらないで保湿剤を使いましょう。
唇が荒れると、気になって荒れた皮を引っ張る方が多いのですが、無理に剥がすと、浮いた部分だけでなく、皮膚の深いところまで傷つけることになります。引っ張っているといつまでも治りません。唇の表面は、他の皮膚と違って3-4日で代謝します。浮いた皮膚の上に保湿剤を塗り刺激をさけると、短期間で治ってきます。唇は荒れやすい一方で、適切な治療をすると治りも早いのです。
乾燥を防ぐ為に、リップクリームが使われますが、リップクリームが刺激になっていることもあります。唇全体に小さな水疱ができて痒みや痛みがある場合、多くはリップクリームによるかぶれです。リップクリームは、荒れている唇に塗ることが多いため、かぶれる頻度が高いです。使い始めは問題なくても、使っている間にリップクリームの成分にアレルギーが形成されることが多いです。
口紅にかぶれている場合もあります。最近、人気のツヤ出しグロスも刺激になっていることがあります。治りが遅い場合は、口紅やグロスのパッチテストをお勧めします。
唇の乾燥を防ぐには、ワセリンがお勧めです。市販のワセリンでも保湿効果は高いですが、当院では精製ワセリン(プロペト)を処方しています。プロペトは、粒子が細かく刺激が少ないので眼科でも使用されています。塗り方にもコツがあります。強くこすりつけず、軽く表面にのせるつもりで塗りましょう。唇の荒れは、なめったり、こすったり、しなければ治ります。3-4日の我慢です。